一流アスリートと脳の働き

 

「もうダメだ・・・」そう思う瞬間は誰にでもあるでしょう。

スポーツの世界、特に一流のアスリートや偉業・奇跡と言われるようなことを成し遂げた人そんな人たちが限界をどうやって超えたのか・・・それが脳科学的に解明されてきたのです。

 

「もうダメ…」トレーニングや本番の最中そう思った時、実は体はまだ余力を残しているといいます。脳はこのままいけば生死に関わる、そう判断すると脳幹から第一運動野・補足運動野(筋肉に動くよう指令を出す部分)にストップをかけます。

筋肉の動きを止め、エネルギーを温存するのです。

しかし、アスリートの中には限界を超えたトレーニングや試合当日の快挙を成し遂げる人がいます。そこに関わるのが「前頭前野」です。前頭前野の「意志の力」は脳幹の体を守ろうとする働きすら超えることがあるのです。

この意志の力を引き出すのが、夢や希望、向上心からくる言葉「私にはできる」という自分を信じ達成したいという強い思いです。

この「意志の力」を持った前頭葉は脳の中の29%(サル11%ネコ3%)を占めています。
脳の3割近くを占める前頭前野は他の生物と比べても格段に大きく、本能を「意志の力」で押さえ夢をかなえる力を人間だからこそここまで発達したのだと思います。

この前頭前野が使える人と使えない人の差はどこにあるのでしょうか?
やる気・根性…?
しかし、人からやれと言われてやる気や根性がでることはほぼありません。
前頭前野から出る「私はがんばれる・やれる!もっとやれ!」という指令は自分のうちから出るものだから効果があるのです。

私たちは安全を感じていると新しい脳(前頭葉など)にエネルギーを使うことができますが、そうでないときは命を守る働きをする古い脳にエネルギーを回します。
ストレスがあったり、気持ちが安定していない時などがそうです。
記憶や感情に関係する海馬や扁桃体が動きすぎると前頭前野にエネルギーが回ってこなくなります。

ネガティブなことが頭から離れない(海馬の固定)と前頭葉が働くエネルギーが足らないので「私はできる・がんばれる!」という指令が出せないのです。
前頭前野にエネルギーが十分回るようにするためにはストレス状態や不安・心配事を解決し
脳が「防衛反応」(問題解決に向かわない、パターン化された感情・思考・行動)を起こさないようにすることが先決です。
安全を感じられる状況であれば、人は本能さえ押さえて夢をかなえる根性を発揮できます。

脳には可塑性があり、置かれた状況・環境・経験からそれにあった変化が可能です。
脳幹からストップがかからなければ、運動野はますます大きくなり運動能力もアップし、
ケガなどで失われた機能があれば、他の脳がその部分をおぎなうよう発達する例もあります。
前頭前野の持つ可能性はまだまだはかり知れません。
運動能力だけでなく、勉強や仕事…夢や人生の目的をかなえる強力なサポーターになるはずです。
今後の脳科学の研究に期待しつつ、臨床への応用を日々模索したいと思います。