学校法人 九州ルーテル学院 ルーテル学院中学・高等学校教諭

サッカー部監督 小野秀二郎氏 

私と池田先生とのご縁は2年前、学院中学のある保護者からの「メンタルトレーナーでいい方がいらっしゃいますが関心ありませんか」の一言からでした。

当時、期せずしてその分野に関心が高かったので、すぐにお会いし毎月1回、部員全員を対象としたご指導を頂くことになりました。


 前頭葉の活用など全く予備知識のない生徒達は向き合う姿勢により多少の個人差はありながも大変新鮮に浸透してくれたように思います。


 その年は戦績で言うと指導開始間もない新人戦は準決勝で大津高校に敗れ3位。

3カ月後の高校総体で決勝で新人戦と同じ大津高校に0-2で敗れ2位、その後の選手権ではダークホースの秀学館に逆転敗けしてしまいました。

ですので戦績的に悪くないのですが、対大津選でo点での敗戦など多少残念な面もありました。

一方で集団競技で個々のモチベーション活用の難しさもあり勝負に繋げることは一朝一夕にはいきません。


 それが2年目は正直、前年までの基礎的な能力が総体的に低い生徒たちが驚くべき成長を遂げ、戦績も最後は例年の位置まで行ってくれました。


 最初の1年間で、内発的アプローチ無くして真の力とならないことなど、最も変えていただいたのは指導者である私自身でした。


 それまでの私はサッカーは格闘技との前提から誰が見てもスパルタタイプで「どんなレベルの生徒も厳しい指導で一定まで引き上げる」という意識で対処していましたし、それは成せると確信していました。

生徒にしてみれば、それは「外発的プレッシャー」で力が発揮できても長続きしないなど多くを学びました。

なぜこの練習をするか自身の内に湧き出さない間は身にならないのです。

「内面」にアプローチされる池田先生の指導で明らかに変わる生徒の姿を見つつ、また私自身がそれを感じる中で先生がいない時間も池田先生役を継続して生徒に伝えていける体制ができたのではないかと思います。


 ある生徒をキャプテンに使命したところが彼は真面目なものですから全てを正面から受け止め過ぎて精神がパンク、最後はバーンアウトしてしまいました。

この時、先生から本人と家庭の中での彼への接し方をご両親に指導された結果、彼は半年のブランクを経て全員の推薦を受け再度キャプテンとなりました。

決して容易なことではありません。

「身長が2~3cm伸びた感覚で相手に臨む」

「爬虫類の脳の上に哺乳類の脳。このトカゲの脳が出ないよう安全な状態にし人間らしい前頭葉を活用する」

など先生は脳科学を多く取り入れ解決に導くアプローチで組まれています。お蔭で「ボールが自分のところに来い」「緊張は興奮。臨戦状態にある」「ルーチンの力」など様々な指導が生徒の内面に間違いなく根を張って意識が変わっています。

その他のスポーツセラピー実績

前頭葉を使ったら能力が30%アップするということは脳科学的にも証明されていますが、スポーツに関しても同じことが言えます。


上手に前頭葉を使うことで、3割増しの力が発揮できますが、それ以前に本番で実力を十分発揮できないと悩んでいるアスリートもたくさん見てきました。

どうしたら本番で実力を発揮できる集中力を養うことができるのか、逆にどうなると前頭葉にエネルギーが行かなくなってしまうのか…関わってきたアスリートの事例を交えてお話ししてみたいと思います。

1・女子バスケ(高校)

2~3回ほど話しました。
県内で一番強い大津高校にどうしても勝つことができず、県大会で2位に甘んじていた女子バスケ部。いつも決勝でダブルスコアの大差で負けていました。
「大津と当たると実力が出せない」と彼女たちは言っていました。

まず、自分たちがどんな状態なのかを一緒に分析しました。
レギュラーの3年生を最前列に座らせ、机の上に置いた椅子に「大津高校と試合する時の自分」が座っていると思ってみてもらいます。
最前列のレギュラーに立ってもらい、背筋を伸ばしてあごを引き背が2センチくらい高くなった気持ちで「私は18才です。10年(ほぼ小学校低学年からバスケをしていました)バスケをしています。」と言って座らせらせ、前の椅子を見るのです。背筋を伸ばしてあごを引く…昔の人がいったこの姿勢は前頭葉にエネルギーが行く姿勢で理にかなっているのです。

精神的・心理的・情緒的に何歳の子に見えるか?そう聞くだけでほとんどの子が
「小学生に見える」と言いました。
その小学生がどんなしぐさ・体勢でいるか聞くと手をすり合わせている・足踏みしている・頭を抱えている…相手を正面から見て堂々としている子は誰もいなかったのです。
これを転移感情といい、脳が安全を感じることができないとトラウマやいやな感情をともなった記憶、ネガティブな思い込みをした年齢まで精神的な年齢が退行し、防衛反応を起こし実年齢での対応ができなくなってしまうのです。

「大津の前でこの小学生でいて勝てるか?」と聞くと皆自分たちがなぜ勝てなかったのか理解し、その日の練習から「私は18才です。10年のバスケの経験があります。」と今ここの実年齢になることから始めました。

次に試合で大津高校にあたった時、負けはしましたが1点差でかなり自信がついたようでした。

その年のインターハイ県予選決勝で大津高校に3クウォーターまでリードしていましたが、そこで監督さんが大声で叱咤激励・指示したことで委縮させてしまったのか、逆転負けしてしまいました。
しかし前頭葉を使う効果には気づいてくれたと思います。




2・陸上(熊本高校・男子)
高校2年生の彼は腎臓に病気を抱えあと1年しか走れないと宣告されていました。悔いが残らないようできるが義理のことをして成績を残したいと私のところに来ました。


前頭葉の重要性、それを邪魔する転移感情や防衛反応に気づくことで400メートルのタイムが2秒04(距離にすると20メートルくらい)縮めることができたそうです。
本人もなぜこんなにきれいなフォームで走れたのかと自分でも驚いたそうです。


3・柔道(九州学院)
知り合いを通じて監督と知り合いすぐに「才能はあるが蚤の心臓」という選手の話を聞きました。
数日後私のところに来た選手に話を聞いたところ、祖父・父共に柔道選手という柔道一家に育ち、絶対権力者の祖父には逆らえずとても怖かったと話してくれました。


彼は祖父と監督の顔が重なってしまい、監督に叱られると祖父に叱られていたころに退行し(転移感情)試合中も緊張し萎縮していたのです。


それに気づき心理療法(再決断)を受けた後は監督が「何をされたんですか?」と驚いて電話してくるほど変わったそうです。
九学でキャプテンも務め、大学も柔道特待で進学したそうです。


4・野球(投手個人 高校生)
中学時代に日本一になるような才能を持ち、元ボクシング選手の父も毎試合バックネット裏で観戦するほど熱心な保護者でしたが負けるたびに「根性が足りない」と叱られ続け野球が苦痛になっていました。

お父さんに息子が転移感情になっていることを理解してもらい、視界に入らないところで観戦し「根性」と言わないことを約束しました。
父の変化に安全を感じ、次の試合では野球人生で一番いいピッチングだったと親子そろって言えるようなピッチングができたそうです。

高校でやめるつもりだった野球を大学でもする決断もできたそうです。

指導者が(子どもの場合は保護者も)安心と安全をアスリートに与え、前頭葉の使い方を学べばほとんどのアスリートのパフォーマンスは上がると私は思っています。


実際私の関わった高校生アスリートたちは例外なく成績を伸ばしています。


音楽を聴いて集中したり、ルーチンワークをして験を担いだりすることも効果がありますが、もっと科学的に集中力を高める方法があるのだということをたくさんの方に知ってほしと思います。



余談ですが強豪校・伝統校と言われる学校がありますが、対戦する学校の子どもたちはそのユニフォームを見ただけである意味転移感情になっているのかもしれません。


逆に強豪校はそのユニフォームを着ているだけで自分に安心と安全を与える効果があり結果、落ち着いて前頭葉を使える状態になりやすいのではないかと思います。